A. 後生細菌は古細菌の呼び方のひとつです。最近は後生細菌という言葉は基本的に使わない気がします。「古細菌」「細菌」と漢字では書きますが、僕自身はあんまりこの表現が好きではなくて…。あまり使わない人もいますね。 塩湖や熱水噴出孔といったすごくしょっぱいところやすごく熱いところ、つまり原始的な地球に似た環境に生息していて、すべての生命の祖先である細菌に似ているが細菌ではない生き物ということで、古細菌と名付けられました。ただ、近年の遺伝子解析の結果から、細菌と古細菌と、われわれ真核生物を比べると、古細菌と真核生物が近い存在で、細菌がちょっと離れていることが分かりました。つまり、進化的にはあまり古くないということです。古細菌はアーキア、細菌は真正細菌(バクテリア)と区別する表現がありますが、あんまり使われないので…後生細菌というのも、もう基本的には使われないような気がしますね。
A. 学生時代、大学院生出張授業プロジェクト(BAP:大学院生が自分の母校に出かけ、高校生に研究の魅力を伝える”出張授業”を中心に活動している学生団体)の副代表を務めていました。その時にBAPが東大の総長賞をいただき、授賞式に参加しことと、BAPの活動とBAPcafeというサイエンスカフェの活動をそれぞれサイエンスコミュニケーションの和文誌に報告した(論文が掲載された)ことです。
Q. 今までの研究の中で印象に残っている出来事はありますか?
A. ひとつは間違いなく博士号取得、学位授与式です。博士号を取って、黄門様の印籠じゃないですけど、研究してますよって言うと、いろんな所で立ち入りとかサンプリングの許可を頂けます。「持っててよかった博士号」みたいな(笑)
A. 世界最高記録が122℃ですね。ただ、その温度が一番良いかというと、必ずしもそうとは限りません。例えば、我々も45℃の砂漠に放り出されても一応生きていけるけれども、本当は25℃くらいが生きやすいという適温があるように、122℃でも生きられるその微生物もおそらく活性温度が山なりになるので、100℃くらいがもっとも心地よい環境なんじゃないかと思います。 熱水噴出孔は深海にあって、高い圧力がかかるので、122℃でも水が液体のままでいられるような環境です。そんな環境でも生きている微生物が確認されています。
Q. プランクトンは微生物の1種なのでしょうか?どのグループに該当しますか?
A. プランクトンは日本語では「浮遊生物」と呼ばれるものです。つまり、目に見えるかどうかではなく、基本的には水圏環境に生息していて、遊泳能力(泳ぐ能力)があるかないかで判断されます。非常に微弱に泳ぐことができても、秒速1 m~2 m程度の水流より速く泳げず流されてしまう生き物は浮遊生物と呼ばれます。クラゲも目にははっきり見える大きな生き物ですが、ただ漂っているだけなので遊泳能力という観点からプランクトンといえます。数年前、日本海で大繁殖して有名になったエチゼンクラゲは大きさが2 mぐらいある巨大なクラゲですが、あれもメガプランクトンと言われていますね。
義務教育や高校の授業の中で地学を学ぶ機会があまりないので、そもそも、マントルが固体であることすら意外と知られていないんですよね。僕も大学に入るまで知らなかったですし。火山からマグマが流れるイメージ図などを見て「深いところから上がってくるドロドロのものなんだ!」と誤った先入観を持ってしまうのではないでしょうか。「マントルは固体なんだよ」とという事実を広めて、日本人の勘違いを覆していこうという思いから僕のWebページには”Mantle is solid.”と記載しています。
A. すごい学術的な質問ですね(笑)。欠陥と呼ばれる、マントルの石の構造の割れ目に水があったりします。また、水があると石が「腐る」こともあります。腐る、とはここでは化学組成が変わり水を持つという意味です。結晶の中にちゃんと水をとりこんだ含水鉱物というものになります。つまり、マントルの中で水は、高温高圧でも安定な含水鉱物という形と、欠陥の中に水があるという形で存在します。ちなみに、緑色のマントルの石はほとんど水を含まないんですが、それにちょっと圧力をかけた青いマントルの石は、ちょっとしたすき間である欠陥にとんでもない量の水を蓄えることができるそうです。今一番話題となっている学説は、海の水を丸ごとマントルの青い石の中に入れると考えた時に、実はそのマントルの青い石には、海水の3~5倍ぐらいの量の水を蓄えている可能性があるというものです。そんなにじゃぶじゃぶなの!?って驚きですよね。
Q. 地球の内部で何億年間も、マントルを熱々に維持している熱源はなんですか?
A. すごい!これも学術的な質問ですね(笑)まさについ先日、博士論文を提出しました。その発表審査で、とある先生にされたのと同じ質問ですね(笑)。 僕の博士論文の研究の1つとして「地球がどのように冷えているか」を研究していました。実は地球は今も刻々と冷えています。昔、隕石が地球の重力により集まってきて、ボコボコと衝突して、とんでもなく高温になりました。地球のど真ん中のコアが今も6000℃なのは、マントルが断熱材みたいな役割をして、なかなか冷えていないからだと考えられます。地球の内部から供給され続けている熱もありますが、大部分は、地球ができた時の熱エネルギーが今も地球内部に残っていて、それが宇宙空間に徐々に徐々に垂れ流されているということですね。地球の冷え方は、今まさに研究がなされているホットな話題です。